【まずは結論(要点)】
- 赤ちゃんのほとんどは生まれつき包茎で、成長とともに自然にむけてくることが多いです。
- ただし、排尿時に包皮が風船のようにふくらむ/痛がる/炎症を繰り返す/包皮先端が白く硬いなどは医療的評価が必要です。
- 治療は段階的に、**清潔ケア → ステロイド軟膏療法(多くで改善) → 手術(必要な場合)**の順で検討します。
- **嵌頓包茎(むいた包皮が戻らない)**は救急受診が必要です。
【小児の包茎は「ふつう」から始まる】
生後すぐは包皮と亀頭が癒着していて、むけないのが自然です。幼児期~学童期にかけて癒着がはがれ、出口も広がり、少しずつむけやすくなります。就学前でもむけない子は珍しくありません。
目安として、5歳頃でむけない子は一定数、10歳頃には少数という報告が多いですが、個人差があります。焦らず見守りつつ、困りごとがあれば受診しましょう。
真性包茎と仮性包茎
- 真性包茎:手でそっと引いても亀頭が出ない。出口が狭く痛みが出やすい。
- 仮性包茎:通常はかぶっているが、手でむけば出せる。多くは正常の範囲です。
受診の目安(こんなときは相談を)
- 排尿時に包皮が大きくふくらむ/尿の勢いが弱い、痛がる(包皮口狭窄の疑い)
- 亀頭包皮炎を繰り返す(赤い・腫れる・膿・悪臭 など)
- 包皮先端が白っぽく硬くなる(炎症反復による瘢痕・線維化。自然改善が乏しいサイン)
- 嵌頓包茎:むいた包皮が戻らず亀頭が腫れる/色が悪い → 緊急
- 保護者のケアが不安、学校生活や清潔に支障がある など
【亀頭包皮炎(繰り返す炎症)への理解と家庭ケア】
よくある原因
- 包皮内に汗・汚れがたまり細菌が増える
- おむつかぶれやカンジダなど皮膚炎の一部として起こる
- 強い力での包皮翻転や不適切な清掃で小さな傷ができる
家庭でできること
- ぬるま湯シャワーで外側をやさしく洗う(むけない子は“中を洗おうと無理にむかない”)
- こすらず水分を拭き取り、必要に応じてワセリンで保護
- 痛みが強い・膿や発熱がある・繰り返す場合は受診。医師が抗菌薬や抗真菌薬、消炎薬を適切に選びます。
- 炎症が強い時期は包皮を無理にむかないのが鉄則です。
【包茎の治療:段階的アプローチ】
1)保存的(手術以外)治療が第一選択
- ステロイド軟膏療法
- 1日1~2回、狭い部分に少量をやさしく塗布(お風呂上がりが◎)。
- 期間は目安1~3か月。皮膚をやわらかくし開きやすくします。
- 多くのお子さんで改善が見られます。中止後に再び狭くなることもあるため、医師の指示で経過観察と維持ケアを続けます。
- 包皮翻転の練習(医師の指導下)
- 痛みのない範囲で少しずつ。家庭の自己流で強く引くのは禁物です(傷や嵌頓の原因)。
維持ケアのコツ
- むける子:入浴時に軽くむいて洗い、必ず元に戻す。
- むけない子:外側を優しく洗うだけで十分。綿棒を奥に入れる等は不要です。
2)手術(外科的治療)を考える場面
- 保存的治療で改善しない、再発を繰り返す
- 包皮口狭窄が強い/排尿障害がある
- 炎症反復で白く硬い瘢痕を形成している
- 嵌頓包茎を起こした既往があり再発リスクが高い など
主な術式
- 環状切除術:余剰包皮を環状に切除。再発が少なくケアがしやすい。
- 背面切開術:背側に切開を入れて広げ、包皮を温存。見た目が自然に近い。
手術時期
緊急性がなければ、お子さんの理解とセルフケアができる小学校高学年~中学生が一つの目安です。
一方で、排尿障害・感染反復・強い瘢痕がある場合は年齢にかかわらず早期手術を検討します。未就学児でも全身麻酔で安全に実施可能ですが、利益と負担を個別に評価します。
【手術前後の流れと生活の目安】
- 麻酔:小児は原則全身麻酔で安全・確実に行います。
- 所要時間:おおむね30~60分、日帰りが一般的。
- 術後ケア
- 透明フィルムや包帯で保護。処方の痛み止めを適切に使用。
- 入浴:医師の指示があるまでシャワー中心。創は清潔・乾燥を意識。
- 糸:吸収糸を用いるため通常抜糸不要。
- 通学・運動:登校は数日休むことがあります。軽い運動は2週間前後、水泳・激しいスポーツは約1か月が目安。
- 合併症(出血・感染・創離開 など)はまれですが、腫れが急に強い/発熱/出血が止まらないなどは早めに受診してください。
- 長期的には再発はほとんどなく、性機能や成長への影響はありません。
【よくある誤解と正しい知識】
- 「小さいうちに必ずむかないといけない?」
→ 必ずではありません。症状がなければ経過観察でよいことが多いです。 - 「家庭でぐっと強く引いて鍛える?」
→ 禁物です。傷と瘢痕、嵌頓包茎の原因になります。 - 「白いつぶ(スメグマパール)は膿?」
→ 汚れではなく、癒着がはがれる過程の皮脂の塊で多くは心配いりません。 - 「市販薬で炎症を繰り返す」
→ 病態により抗菌・抗真菌・適切な強さのステロイドなどが必要。自己判断は避け、受診を。