「うちの子、包茎かもしれない…」 「むいてあげたほうがいいの?手術が必要?」
男の子を育てるお父さん・お母さんから、このようなご相談をとてもよくいただきます。
インターネットには「早くむいたほうがいい」「放っておくと手術になる」など、さまざまな情報があふれていて、不安になってしまいますよね。
結論からお伝えすると、子どもの包茎のほとんどは病気ではなく、治療の必要はありません。
この記事では、小児泌尿器科の専門医が、子どもの包茎について正しい知識と受診の目安をわかりやすく解説します。
【子どもの包茎は「生理的包茎」――ほとんどは自然に治ります】
包茎(ほうけい)とは、おちんちんの先端にある亀頭(きとう)という部分が、包皮(ほうひ)という皮でおおわれていて、露出できない状態のことです。
実は、生まれたばかりの男の子は、ほぼ100%が包茎です。
これは「生理的包茎(せいりてきほうけい)」と呼ばれ、赤ちゃんにとってごく自然な状態です。
赤ちゃんの包皮は、亀頭とくっついていて、簡単にはむけない構造になっています。
これには理由があります。包皮は、まだデリケートな亀頭を、おしっこやうんちの刺激、細菌などから守るカバーの役割をしているのです。
成長とともに、包皮と亀頭のくっつきは自然にはがれていきます。
そして体が大きくなるにつれて、少しずつ包皮がむけるようになっていきます。
目安として、3歳ごろまでに約半数、小学校入学のころには多くのお子さんで、包皮がむけるようになるといわれています。
思春期を過ぎるころには、9割以上が自然に改善します。
つまり、幼児期に包茎であることは「異常」ではなく、成長の途中の姿なのです。
「同じ年ごろの子はもうむけているのに」とあせる必要はまったくありません。
ちなみに、包茎には「真性包茎(しんせいほうけい)」と「仮性包茎(かせいほうけい)」という言葉があります。
真性包茎は包皮がまったくむけない状態、仮性包茎はふだんはかぶっているものの、むこうとすればむける状態を指します。
大人では区別が重要ですが、子どもの場合はどちらであっても、成長の過程として見守れるケースがほとんどです。
また、包皮の内側に白っぽいかたまりが透けて見えて、「しこりでは?」と心配されることがあります。これは「恥垢(ちこう)」と呼ばれる、皮膚の垢(あか)がたまったものです。
包皮がはがれていく過程で自然に出てくるもので、病気ではありませんので、ご安心ください。
なお、無理に包皮をむこうとするのは絶対にやめてください。
強くむくと、皮膚が切れて出血したり、傷あとが硬くなって、かえってむけにくくなったりすることがあります。
また、むいた皮が元に戻らなくなる「嵌頓包茎(かんとんほうけい)」という緊急事態を起こす危険もあります。
【治療が必要な包茎とは? 受診の目安となるサイン】
ほとんどの包茎は経過を見守るだけでよいのですが、なかには治療をおすすめするケースもあります。
次のようなサインがあれば、小児科や泌尿器科(ひにょうきか:おしっこの通り道や性器を専門に診る科)を受診しましょう。
1つ目は、「亀頭包皮炎(きとうほうひえん)」をくり返す場合です。
亀頭包皮炎とは、包皮の内側に細菌が入りこんで炎症を起こす病気です。
おちんちんの先が赤く腫れる、痛がる、うみが出るといった症状が見られます。
1~2回であれば軟膏(なんこう:塗り薬)などで治りますが、何度もくり返す場合は、包茎の治療を検討します。
2つ目は、おしっこに関するトラブルがある場合です。
包皮の出口がとても狭いと、おしっこをするときに包皮が風船のようにふくらむことがあります。これは「バルーニング」と呼ばれる現象です。
軽いものは心配いりませんが、おしっこの勢いが弱い、時間がかかる、痛がるといった場合は受診をおすすめします。
また、膀胱炎(ぼうこうえん)などの尿路感染症(にょうろかんせんしょう:おしっこの通り道に細菌が入って起こる感染症)をくり返すお子さんも、包茎が関係していることがあります。
3つ目は、包皮の先が白く硬くなってきた場合です。
まれに「閉塞性乾燥性亀頭炎(へいそくせいかんそうせいきとうえん)」という、包皮が硬く変化してむけなくなる病気があります。
この場合は自然に治ることが期待できないため、専門医による治療が必要です。
そして、先ほどふれた嵌頓包茎は緊急事態です。
むけた包皮が元に戻らず、亀頭がしめつけられて腫れあがった場合は、夜間や休日であっても、すぐに医療機関を受診してください。
ふだんのおむつ替えやお風呂の時間は、おちんちんの様子を観察できるよい機会です。
赤み・腫れ・お子さんが痛がるそぶりがないか、さりげなくチェックする習慣をつけておくと安心です。
【包茎の治療方法と家庭でのケア――お風呂で清潔を保つことが基本】
治療が必要と判断された場合でも、いきなり手術になることはほとんどありません。
現在の小児泌尿器科では、まず「ステロイド軟膏(なんこう)」による治療を行うのが一般的です。
ステロイドと聞くと心配になる方もいますが、これは炎症をおさえ、皮膚をやわらかくする作用のある塗り薬です。
包皮の狭い部分に1日1~2回、数週間ほど塗り続けると、多くのお子さんで包皮がむけるようになります。
ステロイド軟膏による治療は、多くのお子さんで改善が期待できる方法です。ただし、効果や再発のしやすさには個人差があります。塗るのをやめると再びむけにくい状態に戻ることもあり、治療後のケアも大切です。
とくに、治療後にお風呂で皮をむいて洗う習慣が続かないと、再発しやすくなります。
その場合はもう一度同じ治療をくり返すことができますが、効果が続かないときは、次に述べる手術を検討することになります。
軟膏で効果がない場合や、先ほど述べた病的な包茎の場合には、手術を検討します。
手術は「環状切除術(かんじょうせつじょじゅつ)」といって、余分な包皮を切り取る方法が代表的です。小さなお子さんの場合は、体が動かないように全身麻酔(ますい:眠った状態にする方法)で行うのが一般的です。
ただし、手術が必要になるお子さんはごく一部です。
「包茎=手術」というイメージで不安に思う必要はありません。
ご家庭でのケアは、お風呂で清潔を保つことが基本です。
包皮を無理のない範囲でやさしく引っぱり、むける部分だけを露出させて、お湯で軽く洗い流しましょう。
洗ったあとは、皮を必ず元の位置に戻してください。
痛がるところまで無理にむく必要はありません。
いわゆる「むきむき体操」を熱心にすすめる情報も見かけますが、強引に行うと傷や嵌頓包茎の原因になります。
「痛みのない範囲で、少しずつ」が鉄則です。
石けんでゴシゴシ洗うのも、刺激で炎症を起こすことがあるため、やさしく洗う程度で十分です。
なお、お子さん自身が成長してきたら、「自分で洗って、皮を元に戻す」習慣を教えてあげることも大切です。
思春期に向けて、自分の体を清潔に保つ力を育てることにつながります。
【まとめ】
子どもの包茎のほとんどは生理的包茎であり、成長とともに自然に改善するため、治療は必要ありません。
ただし、亀頭包皮炎をくり返す、おしっこが出にくい、包皮が白く硬くなる、といったサインがあるときは受診しましょう。
治療が必要な場合も、まずは塗り薬から始めるのが一般的で、手術になるケースはごくわずかです。
大切なのは、無理にむかないこと、そしてお風呂で清潔に保つことです。
不安なときは一人で悩まず、小児科や泌尿器科の専門医に気軽にご相談ください。